半歩踏み込むアニメ批評!

なぜ、そのアニメは「面白い」のか!?

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『輪るピングドラム』の感想・批評・レビュー・考察

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『輪るピングドラム』の感想・批評・レビュー
http://p.tl/Ke61
原作:イクニチャウダー
監督:幾原邦彦
シリーズ構成・脚本:ほぼ幾原邦彦、伊神貴世
キャラクター原案:星野リリィ
放送期間:2011年7月7日 - 12月22日

「少女革命ウテナ」の幾原監督作品。
「銀河鉄道の夜」と地下鉄サリン事件がモチーフとなっている。

幾原監督の楽しませてくれるもの。
それは、表現のインパクト。
「きっと何者にもなれないお前たちに告げる。」
「生存戦略、しましょうか!」
「ファビュラスマックスだわ。」
「いやだわ、早く擂り潰さなきゃ。」

もちろん映像ではさらに。
麗しの変身シーン
ピングドラム変身

バックでも見ることができ、作中で頻出するピクトグラム/絵文字の数々。
ピングドラム
http://penguindrum.jp/

そして「やくしまるえつこ」。



ここで言いたいこと。
この作品は一つの型、すなわち「背景を持つものと持たないものの組み合わせの妙」に、
模範に至ったんじゃないでしょうか、ということ。
背景を持つ、持たないというというとミスリーディングかもしれない。
私たちとのつながりの強いもの、弱いものという程度の話といった方が正確か。

■背景を持つもの
宮沢賢治だったり、地下鉄サリン事件だったり、
人によく知られたものには、それにまつわるイメージがある。
地下鉄サリン事件なんかだと、それこそ軽々には扱えないナイーブでドキッとするほどのものである。

それは、一歩進めると、先ほども指摘した「インパクト」につながるものであることがわかる。
多くの人にとって、「毒ガス」「VXガス」という言葉よりも、「サリン」の方がずっとインパクトがある。
それは、私たちの経験した、あの地下鉄サリン事件のせいである。
私たちの多くが、より具体的に、肌に触れるような感覚を持つことができる言葉になっている。
(言葉としては出てこなくとも、暗示されるだけでもちろん有効)

■背景を持たないもの
他方、ファビュラス(fabulous)という言葉を日常的に使う人は、日本人ならとりわけ、
欧米人でもそんなに多くはないだろう。
セシルマクビーでもfabulousというラインがあるのも、同じような意図だろう。
聞いたことがないからこそのインパクト。
ところがそれは厳然として存在する、たとえば英国王室でしか使わない言葉があるとして、
そんなどこぞのすっごいところでは使われていた言葉が出てくると、そこに威力が生まれる。

こういうインパクト優先のものづくりをした場合、
ちょっとした物理法則の破綻は無視される。というかそれすらインパクトとして取り込まれる。

そして、逆に伝えたいことが分かりにくくなりながらも、
それよりも、インパクトの強さ/面白さが優先されて独特の作風が誕生する。


■作品の読み解き
往々にして、アニメやら映画やらドラマやらをつくる人は、
たとえば、人間について哲学者よりも長い時間をかけて研究している訳ではないので、
伝えたいことが大したことではないことが多いのは仕方ない、
というか、それが本職ではないので、それでよいのではないかとも思う。
アーティストなのか、ビジネスマンなのかにもよるが。
それよりも、作者を含めた影響の関係を考えた方が広がりが出る。

そういったことをつらつらと思いながら、
この作品のことを考える。
まずあんまり好きではないのだが、辞書的に作品を解剖しよう。
※間違ってそうなところを教えてくれるとありがたいです。

●「銀河鉄道の夜(以下G)」
ショウマとカンバは、Gにおけるジョバンニとカムパネルラ。
響きからしても性格からしてもの名前はここから来ていると言っていいだろう。
苹果という表記もGならでは。
運命の乗り換えをするというモチーフは、Gにおける北十字から南十字への異次元旅行に見られる。
銀河鉄道から地下鉄が連想され、地下鉄からサリン事件が連想されたのだろう。
そして自己犠牲という点についてもGは特色がある。とくにそれが強く現れるのが「蠍の火」。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」
宮沢賢治は、自分が恵まれているという認識から、自己犠牲に敏感だったという。

●ピングドラム
ピングドラムとは愛の象徴。
ただ男女間の関係に限定されるものではなく、それも含め家族間にも同胞間にも見ることができるもの。
ゆえに、「輪るピングドラム」とは、愛でつながれる人間関係を示す。
とくに最終話で、カンバ、ショウマ、ヒマリが、互いに愛し合い、命を投げ打ってでも救いたい、という想いを抱き、それによって実現した関係「愛の輪」を示していると思われる。
これが、サネトシ=利己性=透明になった子どもの呪い/黒ウサギ、を打ち破る。
なお、カンバ→ショウマ(幼少期最終話)、ショウマ→ヒマリ(幼少期19-20話)で登場した林檎もピングドラム。
このように、しばしば林檎で表される。
(最終話で林檎が大量に登場するため、ピングドラム=林檎ではない。林檎の個数や分け与えにも、数として意味はなく、生命の源の分け与え=自己犠牲を表しているのみ)
13話でサネトシがピングドラムに言及して、”運命という概念が存在するか、そのルールが人の生涯を支配しているか、そしてピングドラムが存在するか確認したい”、と言っている。
ピングドラムの存在を信じるモモカと、信じられないサネトシがすでに現れている。

※なぜ、ピングドラムと呼ばれるのか。penguin drumという綴りからすれば、ペンギンと太鼓だ。
作中で言及されるペンギンとして、マサコの語る皇帝ペンギンがある。
海にアザラシがいるかどうかをテストするための生け贄。太鼓はテスト結果を伝えるアイテムか。
このままだと太鼓が無理矢理すぎて、もう一歩踏み込まないとならない気がしたので、引っ込めます。
村上春樹「遠い太鼓」、彼が翻訳した「ペンギンの憂鬱」が関連するかもしれない。


●プリンセス・オブ・ザ・クリスタル(以下POC)
ペンギンの帽子をヒマリがかぶったときに顕現する人格。
テロの時に、モモカがサネトシと相打ちになり、二つの帽子に分かれた。
帽子がモモカの声で話すのは23話。
「生存戦略」として、「ピングドラムを手に入れろ。リンゴがもっている、たぶん」と指令を発する。
モモカの日記「運命の果実を一緒に食べよう」を持つリンゴが、
愛であるピングドラムを手に入れるだろう、というリンゴへの期待を込めた言い方になる。


●日記
モモカの日記。運命を乗り換えることができる愛の呪文が書かれている。
「運命の果実を一緒に食べよう。」
日記自体に効力はなく、この呪文でリンゴは乗り換えを行った。
結局、愛を築くこと、すなわちピングドラムを示唆している。


●運命
この言葉が使われるのは多くの場合、
高倉夫妻が首謀者とされる事件により、子どもらが置かれている窮境が念頭に置かれている。
つまり、愛の試練となっている逆境のことであり、逆境の原因が自分にないときのことを運命と言っている。
ヒマリの病気、生活の苦しさ、社会での扱い、がそれに当たる。
モモカが運命を乗り換える力をもっている、とされることも関係する。
モモカは、自分へのダメージと引き換えに、「もしこうだったら」という希望通りに世界を改変できる。
サネトシとPOCは、誰かのダメージと引き換えに、その希望を叶える力を持っているようだ。
愛の試練を乗り越えると、ピングドラムが現れ、運命が覆される。

●林檎
愛する人のために、他の誰でもなく自分の命を犠牲にするとき、ご褒美として林檎が現れる。
(第一話「つまり、林檎は愛による死を自ら選択した者へのご褒美でもあるんだよ。」)
この林檎を使えば=愛を伝えれば(運命の果実を一緒に食べよう)、
運命を変える、つまり別の世界に行くことができる。
(林檎は「この世界とあっちの世界を繋ぐもの」)
これは、どのような方法であっても愛を伝えられたとき世界が変わって見えること、をたとえているものと思われる。
とくに、子どもの視点でその描写がなされている。
例えば、こどもブロイラーで、モモカがタブキに愛を確信させたシーン。
ショウマ×ヒマリ、ユリ×モモカも同じ。


●こどもブロイラー
子どもが愛されていないと確信するとき、他者との関係をできる限り薄くする(透明になる)行動をとる。
生存戦略をあきらめたときに行く場所、それがこどもブロイラー。


●生存戦略/モモカvsサネトシ
生存戦略とは、まさに生きるための方策。
ところで、この世界は、理不尽で不公平なものである。これはモモカもサネトシも同じ認識。
それがゆえに現実世界でも「平等」や「人権」という概念を創出し、それに対抗している。
この作品において、そういった対抗概念にあたるもの、それを総称して「生存戦略」と呼んでいる。
その概念の中身がそれぞれ異なり、とくにモモカとサネトシで代表される。

今作は、高倉兄妹およびリンゴが、モモカとサネトシに代表される考えの間で揺れる物語である。

モモカサイド
POC/おそらくマリオ
・箱に入る人に対して:
 人は「何者にもなれない」が、想像=「イマジン」により相手の立場で考えることができ、箱から出ることができる。
・生存戦略
 想像の上で自分より人を大切に思う、その気持ちを輪としてつなぐこと。

サネトシサイド
kigaの会(高倉夫妻、マサコ父)
・箱に入る人に対して:
 「自分という箱から一生でられない」(サネトシ)。想像力がないため「何者にもなれない奴ら」(ケンザン)。サネトシ自身ですらその呪い=利己的なルールから逃れられない。
「君たちは決して呪いから出ることはできない。僕がそうであるように。箱の中の君たちが何かを得ることなどない。」(サネトシ)
 なお、サネトシとkigaの会では若干ニュアンスが異なる。
 サネトシは、利己性を人間の本性として語りそれを否定(利己的な生物であるからダメ)、
 ケンザンは、利己性を自分達を除くほとんどに対して語りそれを否定(具体的行動として利己的じゃダメ)。
・生存戦略
 世界を壊す。
 理想世界可能性①物理的な法則が消失した世界(既存の価値観も当然破綻)
  最終話にて、ヒマリを失いかけ絶望の淵のカンバのシーン。
  しかしサネトシ曰く、この世界は絶望に陥るからといって全く配慮してくれない。
  「真に純粋な生命の世界は利己的なルールが支配している。そこに人の善悪は関与できない。
  つまり、もう何者もこの運命を止められないのさ。モモカちゃん見せてあげるよ、世界が壊れるところを。」(サネトシ)
  死なざるを得ないヒマリを救ってしまうことも含め、世界の物理的な秩序も破綻させてしまう。
 理想世界可能性②個が消失した世界
  「壊すしかないんだ。〔自分という〕箱を、人を、世界を。」
  ②-a 私有財産を否定する、共産主義的な主張。制度による利己性の否定。
  ②-b そもそも利己的である人格を否定する、エヴァの人類補完計画。
 理想世界可能性③利己的な人間が駆除された世界
  この世界の人間は利己的で、「人に何かを与えようとはせず、いつも求められることばかり考えている」(ケンザン)から、
  彼らの一部を殺し、人を啓蒙し、呼び掛ける、
  ”人に与え、人を求める=愛することのできる者だけの世界をつくろう”、と。


●サネトシ
サネトシとモモカはもともと普通の人間であったがすでに死んでいる。
作品での現れは、利己性という呪いに気づき、それに対抗する思念の結晶=幽霊としてのものだと思われる。
つまり、サネトシ/モモカという現象は心象であるが、
それは他の「実在する」人間と変わらずに心象であり、人格を備える。

宮沢賢治「春と修羅」より抜粋
 わたくしといふ現象は
 仮定された有機交流電燈の
 ひとつの青い照明です
 (あらゆる透明な幽霊の複合体)

穿ちすぎた見方かもしれないが、
彼らをそのような幽霊だと解釈し、モモカタイプ/サネトシタイプの考え方の現れだとすれば、
彼らの生存戦略とは、対立する考え方のうち、自分のタイプを人々に浸透させていくことだと思われる。


●運命の至る場所
これは、中央図書館そらの孔分室と同一の場所だろう。ちなみに、そらの孔はGにおいても登場する。
暗黒星雲であり、Gにおいては「冥界と現世を結ぶ通路」と解釈されている。
つまり、運命の乗り換えが考えられる場である。
Pでその乗り換えの場は最終話における駅名「運命の至る場所」であった。
列車が通過した後、サネトシとモモカが現れ、サネトシが残される。
運命的な、自分の容喙できない逆境が「運命の至る場所」。
そこで、愛による生存戦略を信じられるモモカサイドか、信じられないサネトシサイドかの選択が迫られる。


●村上春樹
地下鉄サリン事件には「アンダーグラウンド」を読まざるを得ない。
そして、想像力(イマジン)のない人物「何者にもなれない奴ら」を徹底批判するのは「海辺のカフカ」。
「かえるくん、東京を救う」も村上春樹。

なお、途上人物の名前の表記は見やすさを考慮して、あとパソコンが記憶すると厄介なのもあって、カタカナにしました。冠葉=カンバ、晶馬=ショウマ、陽毬=ヒマリ、苹果=リンゴ、多蕗=タブキ、ゆり=ユリ、真砂子=マサコ、桃果=モモカ、眞悧=サネトシ、剣山=ケンザン



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  1. 2012/02/11(土) 19:55:53|
  2. アニメについて
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